秋のシノワズリと300円のブローチ|普段きもの日和vol.2

普段きもの日和

今日の着物コーディネート テーマは、秋のシノワズリ。

帯留めにしているのは、アンティークショップで見つけた300円の小さなブローチ。

けれど、値段よりも先に心が動いたのは、このブローチの持つ物語めいた佇まいでした。

繊細な曲線と、果実のようなデザイン。

金色のなかにそっと沈む、貴石の落ち着いた色味。

まるで帯留めになるのを待っていたかのように

帯と合わせると、静かに、しっくりと馴染んでくれたのです。

シノワズリとは?

シノワズリ(Chinoiserie)とは

17~18世紀ごろ、ヨーロッパで流行した”東洋趣味の美術様式”のこと。

西洋の人々が、東洋の美術品を新鮮な気持ちで受け取り

自分たちの感性で再解釈して楽しんだことで花開いたスタイルです。

唐草模様、花鳥風月、金彩、青磁色ーー。

どこか幻想的で、少し異国の香りがする世界。

現実よりも少し夢の中にいるような、不思議な美しさがあります。

きもので表現するシノワズリ

私がシノワズリに惹かれるのは、

きものと通じるものを感じるからかもしれません。

自然や季節を映し取る花鳥風月のモチーフ、

布を重ね、色を選び、帯を合わせる…

その無限の組み合わせのなかに、

異国の香りをそっと忍ばせることもできる。

そんな自由でやわらかな懐の深さに

シノワズリときものの共鳴を感じます。

今日の組み合わせは、

秋の色合いの着物、

手刺繍の「カラス」の錫色の帯、

西洋の曲線を思わせる小さなブローチ、

その静かな色たちを、

まるでシルクロードを渡ってきたような

鮮やかな帯揚げでつなぎました。

洋と和、西と東がゆるやかに交わるーー

その境目のような色合わせ。

それが私の思う「シノワズリ」なのかもしれません。

つい、思わぬ出会いを探してしまう

アンティークショップの片隅で、

無造作に置かれていたブローチ。

それは私に見つけられるのをそっと待っていてくれた

小さな宝物のようでした。

値段ではなく、心が動いた瞬間こそが一番の価値。

そんな出会いが、きものの時間を、いっそう豊かにしてくれます。

きものをまとう日常に、ほんの少しの異国の風を。

秋の午後、静かなシノワズリの気配を胸に、

今日もやわらかく暮らしています。

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